今回はこれまで学習してきた幾何の総まとめとして“中点連結定理”を講義した。
具体的には「中点連結定理(三角形)」「中点連結定理(台形)」「中点連結定理の利用」「中点連結定理の逆」を扱った。
中点連結定理の証明を正しくできる人は世の中にほとんどいない。「そんなバカな!」と思う人は多いと思うが、本当の話である。嘘だと思う人は、ご自分でやってみてもよいし、身近にいる東大・京大・早慶・国公立医学部の学生などに訊ねてみてもよいと思う。私が過去に試してみた結果でいうと、最も偏差値が高い東大理Ⅲ(医学部医学科)の人も含めて誰も正しく証明できたことがなかった。皆さん口をそろえて「相似の性質を使えば明らか」と言うのだが、相似の性質は中点連結定理(の拡張)によって証明されるので、相似の性質を使って中点連結定理を証明することはできないのである。しかし、文科省の検定教科書は相似の性質を証明せずに、その相似の性質を使って中点連結定理を証明するという“反則技”を犯している。それを、注意する指導者もいない上に、本質を考えることよりも点数を取ることが大切な受験生たちは、それを鵜吞みにして何も疑わずに、上記のような情けない結果となってしまうのである。
もちろん、当室の授業では正しい証明を講義する。
「数学なんて社会に出たら何の役にも立たない」という大人は多いが、そのような人には「ならば、あなたは生まれてから今日まで“論理”というものをどのようにして学んだのですか?」と尋ねてみたい。
“論理”の中でもっとも単純なものは三段論法だが、それを明確に学ぶのは中学の幾何においてである。それ以外に明確に学ぶ機会が他に何かあったというなら、それは何なのか教えていただきたい。つまり「数学が役に立たない」という言葉は「私は論理的に物事を考えない」と言っているのと同じことなのである。数学の細かい内容の学習がその後の人生に役立つことはなかったとしても、数学から学んだ“論理”だけはその後の人生に役立てなければならないはずである。その意味でも、数学を学習するときに最も大切にしなければいけないのは“論理”であるから、中点連結定理の証明を相似の性質によって行うというのは絶対にしてはならないことなのである。
宿題は授業の復習をしっかりとして次回の復習テストで合格点をとれるようにしておくこと。