2012年4月15日日曜日

4/14 大学受験数学Ⅰ~間違った数学~

今日は「論理・必要条件と十分条件・同値変形」の第1回目として、命題論理の基本的な証明を講義した。
高校数学Ⅰ・Aを学習したことのある人なら全員、命題「P⇒Q」を直接証明しづらい時には、その対偶「Qでない⇒Pでない」を証明すればよいことを知っているはずである。
しかし、なぜそれでいいのかを知っている人はほとんどいないと思う。
また、ド・モルガンの法則が成り立つことを知っている人も、その証明をしたことのある人はほとんどいないと思う。
これらは数学の証明をしていく上で基本となる定理であるにもかかわらずである。
当室の高校数学ではこれらを命題論理の範囲で必ず証明することにしている。
証明自体はとても簡単なので、生徒の負担になることもないし、自分たちがこれから数々の証明を行っていく上で、よって立つべき証明方法が正しいことすら分からないという気持ち悪さから解放されることになるからである。
まぁ、私がこんなことを言わなければ誰も気持ち悪いとは思わないのだろうけれど・・・

長年、生徒達を見ていて感じることに、「しかし、よく何も疑わずに(教科書や参考書に)書いてあることを信じ込むよなぁ~」ということがある。数学の教科書や参考書は嘘だらけなのだが・・・(答えが間違っているという意味ではない)
私が同年代の頃は、これらの嘘に悩まされ続ける毎日であった。学校の先生たちもその嘘に気付いている人は皆無だったので、質問することもできなかった。まぁ、学校の先生は数学の専門教育を受けているわけではないので仕方ないと言えば言えなくもないのだが・・・(そんな人にしか数学を習えないというのは不幸なことだと思う。)
私にも、それらの嘘を指摘したり説明してくれる指導者がいれば、もう少し受験勉強に専念できたのだが、本当のことが書かれているものを見つけることもできず、ただ一人で証明を考え悩み続けた日々で、受験勉強をする時間はほとんどなかった。

例えば、中点連結定理。この定理を三角形の相似の性質を使って証明している教科書や参考書をよく見かけるが、これは間違いである。なぜ間違いなのかは、三角形の相似の性質「対応する角は等しく、対応する辺の比は等しい」を証明すれば分かるはずである。教科書や参考書では相似の絵を描いておいて、「ほら、相似だと対応する角は等しいし、辺の比も等しいよね~」ってな感じで、さも当り前の性質のように書かれてあり、証明は書かれていないが、いくら当り前そうに見えたとしても、それは見えているだけであって、本当は証明しなければ信じてはいけないのだ。数学では公理と定義以外は全て証明しないといけないのだから。そして、その証明を試みると、その証明には「中点連結定理(を拡張した定理)」が必要になることに気付かされるはずだ。つまり、中点連結定理を相似の性質で証明するということは、中点連結定理を中点連結定理で証明していることになってしまい、循環論法に陥るのである。ただ、私がこれまで接した人でこの事実に気付いている人はほとんどいなかった。早稲田の学生は言うに及ばず、東大理Ⅲをはじめとする東大生も全員、「中点連結定理は三角形の相似より明らか」と信じ込んでいた。(ということは、彼らを指導した人達もまた気付いていなかったということになる・・・ こういうのを受験勉強の弊害というのではないだろうか?)

数学を専門的に学習する時の心得として、数学書を読むときには「ページ番号以外は嘘が書かれていると心得て読みなさい」というのがある。自分が書くテキストには嘘がなく、自分が受験期に費やした(受験勉強に専念するためには)無駄な時間を、自分の生徒には費やさせないようにしなければならないと思う。

次回は、背理法での証明が認められる理由(20世紀初頭には背理法での証明を認めないという考え方ー直観主義ーも存在した)と、受験数学での最重要事項の一つ(にもかかわらず学校では詳しく取り上げられることは皆無である)「同値変形」について、なぜ最重要事項なのかを「数学の入試問題とは何なのか?」を明らかにすることで説明しようと思う。

宿題は、今日の授業の復習と次回復習テストで合格点をとれるようにしてくること。